―謎のメーカー、フェニックスとは―
「フェニックス」というバイクメーカーをご存知の方は少ないでしょう。すでに廃業している(らしい)こともあり、非常にニッチな会社でしたから無理もありません。
ただしハーレー・ダヴィッドソン(以下、H.D.)の旧車に興味があれば、一度は聞いたことがあるかも。
フェニックスはS&S社製のコンプリートエンジンをリジッドフレームに積んだ車両を公認カスタム車として販売していたメーカー、とでも言いましょうか。
何やら訳のわからない単語が並んでいて理解しづらいと思いますので、軽く説明しますと……
―フェニックスの基礎理解―
S&SとはH.D.のパフォーマンスパーツの開発と生産を行っているアメリカ・イリノイ州のメーカーです。
その最大手であるS&Sは過去のH.D.に使える適合パーツのほとんどをリプロダトしており、旧車のエンジンも丸ごと新品で生産しているんです。
そのS&S製のエンジンをその他のH.D.アフターパーツメーカーが供給するフレームやパーツと組み込んだカスタム車両。それを販売していたのが、フェニックスというメーカーです。
セールスポイントとしては「新車でH.D.の旧車に乗れる」、といったところですね。
フェニックスはすでにホームページすら閉鎖されてしまっているので、どんなラインナップがあったのかもイマイチ不明ですが、YOU TUBEの動画を検索してみるとクラシカルなモデルから、グースネックの低重心なモノまで、そのバリエーションはさまざま。
その他フェニックスが現存していた頃の雑誌には、かなりカスタムされた車両なども紹介されており、オーナーが購入の際に自由にカスタムを発注することができたようです。
※著者の車両はクラシックベースでしたが購入後、さらに自分好みのカスタムを施しています。
購入時のルックスはリジッドフレームのショベルをベースに、フットボード&シーソーペダル、フラットフェンダー、SUキャブレターをセット。
容量2ガロンと思しきピーナッツタンクを装備した、チョッパーテイストをミックスしたクラシックなスタイルでした。
―購入に至るまで―
フェニックスの実車に出会ったのは、’60年代後期~’80年代初期に採用されていた歴代エンジン“ショベルヘッド”の車両に強い、神奈川県の中古車販売店でした。1340ccショベルをリジッドフレームに積み、スプリンガーフォークを装備した姿に心を奪われた……。
と、なる前にはかなり悩みましたね。新規のエンジンとはいえ基本構造は旧車と変わりません。旧車と言えば故障がつきもの、が常識。
さらにネットにはフェニックスの悪評も……。そんなマシンがメカ音痴の自分に手に負えるのか、という不安でいっぱいでした。
他にも候補がありました。H.D.正規ディーラーで扱っていた’90年代初頭のファットボーイ。こちらの利点は何と言ってもエボリューションエンジンで信頼性が高いこと。そして何と言っても低金利のローンが組めることと、ディーラーの手厚い保障が受けられる点でした。
両者でずいぶん悩みましたが荒々しい旧車が好き、という心の声に従ってリジッドショベルを選ぼうと決意。
問題はそのフェニックスの個体のコンディションがいかほどか、ということ。でも素人にはオイル漏れの有無くらいしか判断できる材料はありませんでしたね。
―ネットの悪評はメカニックの技術の問題―
いろいろ調べたところ、ネットに流布するフェニックスの悪評は「エンジンを組んだメカニックの力量」にあることが、うっすら見えてきました。
この中古車屋のメカニックは以前、某有名な旧車専門店に勤めていたことから、その腕を信頼して購入に踏み切りました。
基本構造が旧車のショベルエンジンと同じS&Sショベル。純正ショベルに乗り続けている人なら違いを明確に表現できるかもしれませんが、フライホイールが軽量化されていること以外、素人には解りません。しかし間違いなく現行車にはない面白さが詰まっています。
次回はフェニックス・ショベルの気になる燃費や維持費、そしてリジッドフレームのセッティングがいかなる乗り心地を体感できるのか。そんなレビューやインプレッションなどをお伝えしていきましょう。
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